バイパス。
 
 
 
■ 後ろの座席一杯のチェロは彼女に出させた。
 
 
 
■「ハグラカスのが相変わらず旨いな」
「そう。それを好きなひとの前でもやっちゃうのよ」
「俺のことじゃないな」
 
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■ バイパスを通る。
 埼玉から東京へ向かう苛酷な道である。
 目の薄くなったタイヤは、継ぎ目の度に指を戻す。
 一メートルもある羽を後ろにつけたZが抜いていった。
 私はバイパスの深夜営業に入った。
 片方の耳に赤いピアスをした短いスカートの店員が、ここは前払いなんですと言う。